ある日突然、口を開けようとすると左側の顎の付け根に鋭い痛みが走るようになりました。最初は一時的なものだろうと楽観視していましたが、数日経っても痛みは引かず、大好きなハンバーガーを食べることもできなくなりました。インターネットで調べると、顎関節症という言葉が出てきましたが、何科へ行けば良いのかについて意見が分かれており、私は非常に困惑しました。結局、最も信頼できそうだった「歯科口腔外科」を掲げるクリニックを訪れることにしました。診察室で先生に今の状況を伝えると、先生は優しく私の顔を触りながら、顎の筋肉の硬さを確認してくれました。そして、レントゲン写真を一緒に見ながら、今の顎の状態を丁寧に説明してくれたのです。驚いたことに、私の顎の痛みは、最近始めたリモートワークでの姿勢の悪さと、無意識のうちに奥歯を噛み締めていたことが最大の原因でした。顎そのものに欠陥があるというよりは、顎を取り巻く筋肉が悲鳴を上げている状態だったのです。歯科口腔外科での診断を受けてからは、目から鱗が落ちるような発見の連続でした。先生は私に、上下の歯が接触している時間は、1日のうちで食事や会話を含めても合計で20分程度が正常であると教えてくれました。それ以外の時間に歯が触れ合っている状態をTCH、つまり歯列接触癖と呼び、これが顎関節症を引き起こす大きな要因となっているのだそうです。私は仕事中、ほぼ常に上下の歯をくっつけていたため、顎の筋肉に何時間も負荷をかけ続けていたことになります。治療として始まったのは、マウスピースによる保護と、行動療法と呼ばれる生活習慣の改善でした。マウスピースは寝ている間の食いしばりから関節を守ってくれ、行動療法では、家の中の目につく場所にシールを貼り、それを見るたびに歯を離してリラックスするという訓練を行いました。最初は意識するのが大変でしたが、数週間もすると自然に顎の力が抜けるようになり、それに伴ってあの激痛も嘘のように消えていきました。もしあのとき、何科に行けば良いか分からずに放置していたら、あるいは原因を勘違いして全く別の治療を受けていたら、今でも痛みで苦しんでいたかもしれません。歯科口腔外科で正しい原因を指摘してもらい、顎の仕組みについて深く学んだことが、結果として最も早い解決策となりました。顎の痛みは、体からのSOSサインです。そのサインを正しく読み取ってくれる専門医に相談することの大切さを、今回の経験を通じて身をもって学びました。もし顎の不調を感じたら、迷わず歯科口腔外科のドアを叩いてみてください。そこにはきっと、健やかな毎日を取り戻すための具体的な道筋が用意されています。