東洋医学の世界である漢方では、口内炎は、単なる口の中のトラブルではなく、体の内部の「不調和」が、表面に現れたもの、と考えます。そして、その不調和の原因を探る上で、口内炎が「できた場所」は、非常に重要な手がかりとなります。ここでは、ストレスによる口内炎を、場所別に、漢方的な視点から、その原因と、おすすめの対策を解説します。①【舌の先】:舌の先は、「心(しん)」の乱れが現れる場所です。心は、精神活動を司るため、悩み事や、不安、睡眠不足など、精神的なストレスが溜まると、「心火(しんか)」という、過剰な熱が発生します。この熱が、舌の先に、赤くて痛い口内炎を作ります。動悸や、不眠を伴うこともあります。このタイプには、心の熱を冷まし、精神を安定させる「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」や、「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」などが、用いられることがあります。②【舌の側面】:舌の脇は、「肝(かん)」のエリアです。肝は、感情のコントロールや、気の巡りを司ります。イライラや、怒り、過度な緊張といったストレスが続くと、「肝火(かんか)」が燃え上がり、気の巡りが滞ります。これが、舌の側面に、炎症を引き起こします。頭痛や、目の充血などを伴うこともあります。このタイプには、肝の熱を冷まし、気の巡りを改善する「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」などが、考えられます。③【頬の内側・唇の裏】:この場所は、「脾胃(ひい)」、つまり消化器系の不調が現れる場所です。ストレスで、暴飲暴食に走ったり、逆に食欲がなくなったりすると、胃腸に熱がこもったり、機能が低下したりします。これが、頬や唇の裏に、白くて、少しじゅくじゅくした口内炎を作ります。胃もたれや、便秘・下痢を伴うことが多いです。このタイプには、胃の熱を冷ます「茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)」や、胃腸の働きを助ける「六君子湯(りっくんしとう)」などが、選択肢となります。漢方薬は、個人の体質(証)に合わせて処方されるため、自己判断での服用は禁物です。もし、漢方での治療に興味がある場合は、必ず、漢方に詳しい医師や、薬剤師に相談し、自分に合った処方を選んでもらうことが大切です。体の内側から、バランスを整えるという、漢方の考え方は、繰り返す、ストレス性の口内炎に、新たな光を当ててくれるかもしれません。