数ある口内炎の中でも、特に、チクチクとした痛みが、ダイレクトに感じられ、食事や会話の際に、非常につらいのが、「舌の先」にできる口内炎です。そして、不思議なことに、強い精神的ストレスを感じている時に、決まって、この舌の先に、口内炎ができる、という人は、少なくありません。なぜ、心の疲れは、舌の先端という、特定の場所に、サインとして現れるのでしょうか。東洋医学では、舌は「心(しん)の苗」と呼ばれ、心臓や、精神状態を、色濃く反映する場所だと考えられています。そして、舌の中でも、特に「舌の先端」は、この「心」の状態が、最も現れやすいエリアとされています。ここで言う「心」とは、単に、血液を送り出すポンプとしての心臓だけでなく、思考や、感情、意識といった、人間の高度な精神活動全般を指します。強いストレスや、悩み事、不安、あるいは、睡眠不足などが続くと、この「心」に、過剰な熱がこもり、その機能が、オーバーヒート状態になります。そして、その熱が、関連する経絡(エネルギーの通り道)を通じて、舌の先端にまで達し、炎症、つまり、赤くて痛い口内炎として、現れるのです。これは、いわば、心のSOSが、舌の先という「表示灯」を、赤く点滅させているような状態です。また、現代医学的な観点からも、この現象を説明する、いくつかのヒントがあります。舌の先端は、口の中でも、最も動きが活発で、食事の際に、歯に当たりやすい、デリケートな場所です。ストレスによって、唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥すると、この、もともと傷つきやすい舌の先が、さらに無防備な状態になります。また、ストレスから、無意識のうちに、舌の先を歯に押し付けたり、噛んだりする癖が現れる人もいます。こうした、ささいな物理的な刺激が、免疫力の低下と相まって、口内炎の引き金となっている可能性も、十分に考えられます。もし、あなたが、舌の先に、繰り返し口内炎ができるのであれば、それは、単なる口のトラブルとして片付けず、「心が、休息を求めているサイン」だと、受け止めてみてください。痛い舌は、あなたに、「もう、頑張りすぎなくてもいいんだよ」と、教えてくれているのかもしれません。