上唇やその周辺にできものができると、多くの人は「口内炎だ」と考えますが、中には単純ヘルペスウイルスへの感染が原因で起こる「口唇ヘルペス」の可能性もあります。この二つは、見た目や症状、治療法が異なるため、正しく見分けることが重要です。最も大きな違いは、できものができる「場所」です。一般的なアフタ性口内炎は、唇の裏側や頬の内側、舌といった、口の中の「粘膜」にできるのが特徴です。一方、口唇ヘルペスは、唇そのものや、唇と皮膚の境目といった、口の外側にできることがほとんどです。上唇の裏側に白い円形のできものが一つポツンとできているなら、それは口内炎の可能性が高いでしょう。次に、「できものの見た目と経過」にも注目します。口内炎は、最初から白っぽく、中央がくぼんだ円形の潰瘍として現れます。これに対し、口唇ヘルペスは、まず皮膚にピリピリ、チクチクとした違和感やかゆみが生じ、その後に小さな「水ぶくれ」が複数集まってできるのが典型的なパターンです。この水ぶくれが破れてかさぶたになり、治癒していきます。水ぶくれができるかどうかが、大きな見分けるポイントです。また、口唇ヘルペスはウイルス感染症なので、発熱や倦怠感、リンパ節の腫れといった全身症状を伴うことがあります。特に初めて感染した場合は、症状が強く出やすい傾向があります。アフタ性口内炎では、通常こうした全身症状は見られません。さらに、口唇ヘルペスはウイルスの再活性化によって起こるため、風邪をひいたり、疲労が溜まったりした時に、同じような場所に「繰り返す」という特徴があります。もし、上唇のふちあたりに、水ぶくれを伴うできものが繰り返しできる場合は、口唇ヘルペスの可能性を強く疑うべきです。治療法も、口内炎はステロイド軟膏などが用いられるのに対し、口唇ヘルペスには抗ウイルス薬が必要となります。自己判断はせず、皮膚科や内科を受診し、正確な診断を受けることが大切です。