リップクリームをこまめに塗り、生活習慣にも気を使っているのに、唇のカサカサが全く改善しない。それどころか、皮むけやひび割れがひどくなる一方。そんな時は、単なる乾燥ではなく、何か特定の皮膚の病気が隠れている可能性を考える必要があります。まず、疑われるのが「口唇炎(こうしんえん)」や「剥脱性口唇炎(はくだつせいこうしんえん)」です。口唇炎は、唇全体に炎症が起き、乾燥、亀裂、腫れなどを伴う状態の総称です。その中でも、特に唇の皮が、フケのように絶えず剥け落ちる状態が続くのが剥脱性口唇炎です。アトピー性皮膚炎の体質を持つ人や、唇を舐めたり、皮をむいたりする癖が原因で、慢性化してしまうことが多いと言われています。次に、「接触皮膚炎(せっしょくひふえん)」、いわゆる「かぶれ」の可能性です。口紅やリップクリーム、歯磨き粉、あるいは特定の食べ物や、管楽器の金属部分などが、アレルゲン(原因物質)となって、唇にアレルギー反応を引き起こしている状態です。原因物質に触れるたびに、赤み、腫れ、かゆみ、ブツブツ、そしてひどいカサカサが現れます。もし、新しい化粧品を使い始めてから症状が出た、といった心当たりがあれば、この可能性が高いでしょう。また、「日光口唇炎」も考えられます。これは、強い紫外線を浴びることが原因で起こる唇の炎症です。特に下唇に症状が出やすく、乾燥や皮むけ、水ぶくれなどができます。アウトドア活動や、夏のレジャーの後に発症することが多いです。さらに、稀ではありますが、全身性の病気の一症状として唇が荒れることもあります。例えば、シェーグレン症候群のような自己免疫疾患では、唾液の分泌が極端に減少し、口や唇の強い乾燥を引き起こします。もし、セルフケアで二週間以上たっても症状が改善しない、あるいは悪化する一方である、かゆみや水ぶくれなど、ただのカサカサとは違う症状がある、といった場合は、自己判断で悩まずに、皮膚科やアレルギー科を受診してください。専門医による正確な診断と、適切な治療を受けることが、辛い症状から解放されるための最も確実な道です。