長引くマスク生活の中で、「以前よりも唇が荒れやすくなった」と感じている方は少なくないでしょう。マスクは、ウイルス飛沫を防いでくれる一方で、私たちの唇にとっては、乾燥や摩擦といった様々な負担を強いる原因となっています。なぜ、マスクをしていると唇がカサカサになってしまうのでしょうか。その理由は、大きく三つあります。一つ目は、「マスク内部の蒸れと、外した時の急激な乾燥」です。マスクの中は、自分の呼気に含まれる水蒸気で、常に湿度が高い状態になっています。一見、唇にとっては潤って良い環境のように思えますが、これが落とし穴です。湿度の高い環境に長時間さらされると、唇の角質層がふやけて、バリア機能が低下してしまいます。そして、食事などでマスクを外した瞬間、このふやけた唇から、内部の水分が一気に蒸発してしまうのです。この急激な乾燥が、唇の荒れを深刻化させます。二つ目は、「マスクとの摩擦」です。会話をしたり、表情を動かしたりするたびに、マスクの不織布が唇の表面とこすれ合います。唇の皮膚は非常に薄くデリケートなため、このわずかな摩擦でも、角質層が傷つき、荒れや皮むけの原因となってしまいます。特に、サイズの合わないマスクや、硬い素材のマスクを使っていると、その刺激はさらに大きくなります。三つ目は、「口呼吸の増加」です。マスクをしていると、どうしても息苦しさを感じ、鼻呼吸よりも口呼吸になりがちです。口呼吸をすると、常に口が開いた状態になり、唇が直接、乾燥した空気にさらされることになります。また、口の中自体も乾燥するため、唾液による自浄作用が低下し、口内環境が悪化することも、間接的に唇の荒れに影響します。これらの悪条件から唇を守るためには、マスクを外した際にはすぐにリップクリームで保湿する、摩擦の少ない柔らかい素材のマスクを選ぶ、そして意識的に鼻呼吸を心がける、といった対策が非常に重要になります。