食いしばりボトックス治療の効果は、残念ながら永久的ではありません。通常、三ヶ月から半年ほどで、薬剤の効果は徐々に薄れていき、筋肉の働きも元に戻ってきます。そのため、効果を維持するためには、定期的に治療を継続する必要があります。では、この治療を長期間にわたって打ち続けると、体にはどのような変化が起こるのでしょうか。まず、良い変化として挙げられるのが、「筋肉の再教育効果」です。定期的にボトックス治療を続けることで、咬筋が過剰に緊張することがない「リラックスした状態」が当たり前になります。脳が、その力の抜けた状態を記憶し、無意識の食いしばりの癖そのものが、徐々に改善されていくことが期待できます。その結果、治療を重ねるごとに、効果の持続期間が長くなったり、一回に必要なボトックスの量が少なくなったりする傾向があります。最終的には、ボトックスを打たなくても、食いしばりのない快適な状態を維持できるようになる可能性も秘めています。また、美容的な側面では、咬筋の筋肉自体が少しずつ小さく(萎縮して)なっていきます。過剰なトレーニングで肥大していた筋肉が、使われなくなることで、自然な大きさに戻っていくのです。これにより、エラの張りが解消され、フェイスラインがすっきりとして小顔効果が定着していきます。一方で、長期継続における注意点も存在します。前述したように、ごく稀ではありますが、ボトックスに対する「抗体」が産生されるリスクです。特に、質の低い製剤を使用したり、短すぎる間隔で治療を繰り返したりすると、そのリスクは高まります。抗体ができてしまうと、薬が効かなくなるため、治療の継続が困難になります。これを避けるためには、必ず三ヶ月以上の適切な治療間隔を空けること、そして、不純物が少なく、抗体ができにくいとされる高品質なボトックス製剤(厚生労働省承認のものなど)を使用している、信頼できる医療機関を選ぶことが極めて重要です。正しく、計画的に治療を続けていけば、ボトックスは長期にわたって、あなたの悩みから解放してくれる、強力な味方であり続けてくれるでしょう。
ボトックスを打ち続けるとどうなるか