頬の奥が重苦しく痛み、鼻詰まりや色のついた鼻水が続く。そんな症状に悩まされた時、それは上顎洞炎、いわゆる蓄膿症かもしれません。上顎洞炎とは、鼻の副鼻腔の一つである上顎洞に、ウイルスや細菌の感染によって炎症が起き、膿が溜まってしまう病気です。この辛い症状を前に、多くの人が「薬を飲まずに自然に治ることはないのだろうか」と考えることでしょう。結論から言うと、ごく軽度の上顎洞炎であれば、体の免疫力によって自然に治癒する可能性はあります。特に、風邪などのウイルス感染がきっかけで起こる急性のものです。私たちの体には、細菌やウイルスと戦い、炎症を鎮めようとする力が備わっています。十分な休息をとり、栄養バランスの取れた食事を心がけ、体を温めるなど、免疫力を高める生活を送ることで、上顎洞に溜まった膿が自然に排出され、症状が改善していくケースです。しかし、この「自然治癒」には大きな条件とリスクが伴います。自然に治るのは、あくまで症状が軽く、体力や免疫力が十分にある場合に限られます。症状が重い場合や、黄色や緑色の粘り気の強い鼻水が長く続く、頬や歯の痛みが激しいといった場合は、細菌感染が強く疑われ、自然治癒は期待できません。むしろ、放置することで炎症が悪化し、慢性化してしまう危険性が非常に高いのです。慢性上顎洞炎に移行すると、治療はさらに長期化し、場合によっては手術が必要になることもあります。また、稀ではありますが、炎症が目や脳にまで及ぶ重篤な合併症を引き起こすリスクもゼロではありません。ですから、上顎洞炎の症状を自覚した場合、安易に「自然に治るだろう」と自己判断で放置するのは非常に危険です。まずは耳鼻咽喉科を受診し、専門医による正確な診断を仰ぐこと。その上で、軽症と判断された場合に、医師の指導のもとで自然治癒を目指すのが、最も安全で賢明な道と言えるでしょう。
上顎洞炎は自然に治る可能性があるのか