ある朝、唇に感じたかすかな違和感。それが、地獄のような日々の始まりでした。最初は、少しカサついているだけだと思っていました。しかし、日を追うごとに唇は赤く腫れ上がり、表面はガサガサに。そしてついに、唇全体が薄い皮で覆われ、少し口を動かすだけでピリッと裂けるようになってしまったのです。いわゆる「ただれ」という状態でした。朝、顔を洗うのがまず苦痛でした。水がしみるのです。食事は、もはや試練以外の何物でもありませんでした。温かい味噌汁は激痛を伴い、醤油やソースの塩分は、傷口に塩を塗り込むという言葉を文字通り体現させてくれました。ご飯粒が唇に触れるだけで、飛び上がるほどの痛みが走ります。結局、数日間はストローで飲むゼリー飲料と、冷たいおかゆだけで過ごすしかありませんでした。人と話すのも億劫になりました。口を動かすたびに唇が裂ける感覚があり、自然な笑顔など作れるはずもありません。同僚や友人に「どうしたの?」と心配されるたびに、自分の無残な唇を再認識させられ、気持ちは沈む一方でした。鏡を見るたびにため息が出ます。赤く腫れ、皮がめくれ、所々じゅくじゅくとしている自分の唇。まるで別人です。ワセリンを塗っても、市販の薬を試しても、劇的な改善は見られません。むしろ、塗った時の刺激で痛みが増すことさえありました。このまま一生治らないのではないか。そんな絶望的な気持ちにさえなりました。しかし、皮膚科で処方された薬を根気強く塗り続け、刺激物を徹底的に避ける生活を送るうちに、一週間ほどたった頃でしょうか。ようやく、あの硬く張り付いていた皮が少しずつ剥がれ始め、その下から、まだ弱々しいながらも、新しいピンク色の皮膚が見えてきたのです。その時の安堵感は、今でも忘れられません。唇がただれるということが、これほどまでに生活の質を奪い、心を蝕むものなのかと、身をもって知った辛い経験でした。
唇のただれが治るまでの辛い日々の記録